入社時に配属されるブランドの希望は出していたが、職種についてはとくにこだわりはなかった。「最初は営業に配属されました。セールのときには販売の手伝いにも行きますし、倉庫に行って自分たちで出荷までやることもあります。アパレル業界は華やかなイメージがあったのですが、実際の仕事は泥臭い部分も多く、ギャップはありました。」倉庫内の商品整理はブランドごとに倉庫担当がいるが、追い付かない部分は営業も行っている。2年目には、倉庫の管理をひとりで任されることになった。「徹底的に整理して、自分の家のような感覚でどこに何があるのか大体は把握していました。」さらに、社内の仕組みが変わり、一部のブランドでは、ブランドごとに全国の商品が一カ所にまとめられることになった。そのタイミングで、営業の仕事を離れてディストリビューターとして商品管理を担当した。
「ただ職種が変わるだけでなく、倉庫も変わって商品の量も増えて……このときがいちばんキツかったですね。ただ、自分に任された仕事で人に迷惑をかけたくないと思って乗り切ることができました。」より強いプレッシャーはかかったが、その責任を果たそうとしたことで成長できたという。
入社4年目、MDがやりたいと希望を出した。「『JOSEPH』というブランドは営業と企画が一緒の部隊で、席もすぐとなりにあります。だから、営業でもMDやデザイナーと関わる機会が非常に多いです。そこで企画チームが一丸となって働いている様子を見ていて、一体感があってキラキラしていると思いました。それが、ここ数年で商品も良くなって売上も伸びていて結果に繋がっている。自分も、モノづくりには興味があったので、希望を出しました。」
デザイナーやパタンナーでなくても、商品を生み出す仕事に携われるのがMDだ。「いまのマーケットやお客さんにブランドとしてどう向かい合いたいか。どういう方向性に進みたいかを考えて、デザイナー・パタンナーや仕入先様、営業、ファッションスタイリストに示していく。店舗環境、販売施策、販売促進の方法なども考えて、ブランドの軸とならなくてはいけない仕事です。」
営業やディストリビューターの仕事を経験してきたからこその視点が、MDの仕事にも活かされている。「営業として販売を手伝ったときにお客様がどういう感覚で服を選ぶのかは、肌で覚えています。ほかにも、売上進捗の分析や価格の設定など『数字』に関わる部分でも今に繋がっています。」一方で、MDは「数字と感性の両方が必要だと痛感している」。時間ができたら店舗や街に足を運んで、感覚を養っている。
MDの仕事でいちばん大切なのは「数字と感性の両立」だという。
一歩進んだ新しいデザインの商品だけを作っても、実際にそれを着て生活することは、お客様にとって「ある意味でのチャレンジ」になってしまう場合がある。「実際に、店頭でお客様に勧めたときにも『自分にはちょっと……』と断られてしまうことがありました。」もちろん、ブランドとして新しいものを見せていくことは大事だが、それだけだと売上が作れない。『数字』から見えるお客様のニーズも踏まえつつ、ブランドの格を上げる為には新しくて格好良い事にチャレンジしていく『感性』の両面が重要です。
「みんなが納得して同じ方向を向いて頑張れば、いちばん強いチームになると思っています。強いチーム作りがブランドの成長に繋がります。僕自身、自分が考えたことが売上やブランドの成長につながっていくMDという仕事に、やりがいを感じています。」ブランドを動かしている責任と楽しさを味わいながら、いまの仕事に打ち込んでいる。「自分は、興味のある業界のなかで、やりたいことを探してMDという仕事に出会いました。これから採用試験を受ける学生の方も、自分ではまだ知らない、自分に合う仕事があるかもしれません。可能性を狭めずに、興味のある業界や職種に飛び込んでみるのがいいかもしれません。」
所属部署は取材当時