学生時代のアルバイトでレストランや惣菜屋を選び、就職活動でも「接客業がやりたい」と多くの会社を受けて、オンワードに入社した。ファッションスタイリスト(販売職)としてキャリアを開始し、4年目で店長を経験。以後も現場で経験を培ってきた接客のプロフェッショナルだ。その働きが評価され、2013年に新設された「エリアマネージャー」という職務に任命された。
業務内容が細かく決まっておらず、手探りの部分も大きい新設部署に異動したときは戸惑いも大きかった。「ファッションスタイリストの仕事は、自分で考えたコーディネートがお客様に受け入れていただく楽しさや、感謝の言葉をいただいたときの喜びがあります。それに、自分の働きが売上という数字に現れるのでわかりやすいのですが、スタッフの育成とケアはそういった指標がありません。指導したことがしっかりと相手に伝わっているか、不安になることも多いです。ただ、教えたことができるようになっていると、お店に入った瞬間にわかります。その瞬間の喜びが、お客様に喜んでいただけたときと同じくらい大きいです。」
現在、所属している部署では、関東一帯に展開している全32店舗を3名のエリアマネージャーで分担している。かつて店長を務めていた店舗も担当しているが、初めて訪れた店舗では驚きもあった。「最初は、店長と話し合って売上の立て方を決める仕事だと思っていました。でも、店舗によっては、まずスタッフ同士のコミュニケーション不足を改善しなければいけない等、様々な問題を抱えている店舗もありました。」
指導の内容は、「あいさつ」や「時間厳守」といった基本的なことにはじまり、「接客技術」や「VMD」(ビジュアル・マーチャンダイジング。店内の商品レイアウトなど、視覚的な部分でのマーチャンダイズ)などのノウハウまで含む。その仕事は「会社と売り場の架け橋」だ。「営業やMDも、『この商品をもっと押し出せば売上が伸びるはずです』という指導はするのですが、数字を見ての意見ということもあり、どうしても言い方が固くなってしまいます。伝える内容は一緒でも、私が噛み砕いて説明することでファッションスタイリストの皆にも納得して働いてもらう。相手に合わせてどう伝えるべきかを考えることが、大変なところでもあり今の仕事の醍醐味でもあります。」店長の経験者というバックボーンに裏打ちされた信頼感と、高い指導力が仕事に活かされている。
順風満帆に進んでいるように見えるキャリアだが、入社1年目は退職を考えたこともあった。「最初に配属された店舗の店長がとても厳しい人で、辞めてしまおうかと思ったこともありました。」
そんな状態から気持ちを立て直し、仕事を続けてこられたのは、同期の仲間がいたおかげだ。「みんな別の店舗で働いているので、普段はなかなか会う機会はないのですが、月に1度は集まっていました。話をすることで気持ちも軽くなったし、一緒に働いているわけではなくても『あの子も別のお店で頑張っているんだから!』と励みになりました。」そんな経験あるからこそ、担当している店舗のスタッフのモチベーションが落ちているときには、いち早く気付いて声をかけることができる。新入社員に対しても、その眼差しは向けられている。「学生と社会人では、環境や求められることが大きく変わります。そのなかで、壁にぶつかることは避けられないでしょう。そこで挫けてしまって、会社を辞めてしまう人も多いのですが、一緒に乗り越えるために私たちがいるんです。」
所属部署は取材当時