初めて販売した商品を今も覚えている。ニットを広げているお客さまに試着を勧めて、購入していただいた。うれしかった。最初の頃は1点1点の単品が多かったが、次第に自分でお客さまにコーディネートを提案していくようになった。「きっとお似合いになりますよ、とお勧めして、試着室へご案内して。カーテンが開いた瞬間、お客さまの表情が一変されたりもします。本当にうれしそうな表情で」。着ていったら周囲で好評だった、素敵だと言われた、とわざわざ報告しに来るお客さまも増えていった。中には、自分の家族や友人を連れて来て紹介してもらったことも。ファッションセンスが生きる仕事だと改めて実感した。信頼され、頼られると仕事は楽しい。顧客もどんどん増えていった。「ホスピタリティとは、さりげない振るまい、マナーや言葉遣いなどが大事であると思っていました。でも、最終的には相手のために何ができるか、という気持ちこそが重要ですね。今は、それが仕事でできる。お洋服ひとつで、本当に人というのは変わります」。若いスタッフの教育、店長のサポートなど、年次を経て役割も増えた。それも楽しんでいるうちに、お店を任される立場になっていた。「でも、まだまだ勉強すべきことがある。本当に奥の深い仕事です」。
