アパレル業界でモノづくりに携わりたいと思い、専門学校合格を機に上京。就職活動では、パタンナーとデザイナーを目指して多くの会社を受けていたが、なかなか内定を得ることはできなかった。「絵を描くのも苦手だし、オンワードのような大きくて歴史ある会社に入社できるとは思っていなかった。」というが、面接ではちょっとした手応えも感じていた。「入社試験では、デザイン画を提出するという課題があったんです。面接では、提出したデザイン画に対して、どうしてそのデザインにしたのか等の質問をされました。デザインに込めた想いや考えを、相手にきちんと伝えることの大切さを実感しました。」
そして配属されたのは、オンワードの基幹ブランドでもある「23区」。最初はブランドの規模の大きさにプレッシャーを感じたが、すぐに気持ちを切り替えた。「大きなブランドだからこそ、ここでしかできないこともあるんじゃないかと思ったんです。最初は失敗したり怒られたりすることは当然あるだろうけど、新人から「23区」に配属してもらったことはすごくありがたい。頑張ろう!」と、プレッシャーをうまくモチベーションに変化させた。
実際に働くようになってからは、ほぼゼロからのスタートだったという。「ファッションについて4年間学校で勉強はしていましたが、仕事で通用することはほんの少しでした。わからないことは先輩に聞いたり相談したりするべきだと感じました。」最初は、先輩デザイナーのアシスタントとしての仕事に加えて、「23区」布帛部門の事務仕事を任された。「1年上の先輩から事務仕事を引き継ぎました。今やるべきこと、次にやりたいこと、1週間後に必要になることと、すべてを平行して考えなければいけなくて、慣れるまでは大変でした。やらなければいけないと頭のなかでは思っていても、作業や処理が追いつかず、入社1年目はその作業で頭がいっぱいになっていましたね。」
2年目には、そういった細かな作業を行いながら、徐々にデザインのアイデア提案をさせてもらえるようになった。「15SSに展開の、Cancliniというイタリアのインポート素材を使用したシャツのデザイン提案をさせてもらいました。自分が携わったものを誰かが素敵だと思って、手に取って買ってくれるという経験は勿論初めてでしたし、実際に店頭に並んでいる様子や着ている人を見たときはとても嬉しかったです。親にプレゼントしたら、すごく喜んでくれたのも思い出に残っています。」
「正直、最初の2~3年はアシスタント業務が中心だと思っていたので、こんなに早くデザイン提案させてもらえるとは思っていませんでした。」「『23区』は規模が大きいので、その分関わっている人数も多い。責任のある仕事」と感じて、企画に取り組んでいる。チーフデザイナーがそのシーズンの基本的な方向性を定め、その上で部内全員で商品に関してアイデアを盛り込んでいく。そして、やりたいことがあればしっかり口に出してアピールすることも大切だという。実際にシャツが好きだとアピールしたことで、シャツの企画に携われるようになった。
今後の目標は、もっと生地や素材の知識を深めること。「『23区』の商品は、一見シンプルにみえたり、ベーシックなものがメインですが、だからこそ素材や仕立てに拘って作られています。周りの先輩たちのように『この素材を使う場合はどういう洋服が適しているのか』『この素材が実際洋服になった時にどうみえるか』ということまでしっかりイメージできるようにならないといけないと思っています。そのためにも、やっぱり多くの商品に携わりたいと思います。」周りの先輩デザイナーたちのようになりたいというのは、知識や技術だけではない。「やっぱり、教わることより教えることのほうが難しいと思います。私に後輩ができたら、好きな服の話をしながら一緒に成長していきたいですね。」
所属部署は取材当時